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泰八郎謹製。職人ならではの哲学が込められた逸品。

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アランミクリのページで、それまで個人名を冠したメガネブランドを知らない、認識していなかったと書きましたが。このブランド名は『泰八郎謹製』。前面に個人名が押し出され、しかも謹製=丁寧に作りました、というやや厳めしい印象を感じます。

※アランミクリのページはこちら

泰八郎謹製

http://www.boq.jp/special/2008/taihachiro/index.htm

作品に銘が入るものは他に何か?と思いを巡らせてみると、刀剣や包丁などの刃物であったり、日本酒の場合は醸した杜氏名が記されたものなどがあることに気付きます。

個人名を入れることで、作品への思いが込められるだけでなく作家個人の魂が乗り移ったような緊張感のあるい仕上がを感じることが出来ます。それは作家の責任であり矜持の現れなのでしょう。

泰八郎自身のこと、彼を育てた鯖江という街のこと、そして彼が素材として使い続けるセルロイドについて知りことが、『泰八郎謹製』というメガネへの理解につながると思うのです。

今回は泰八郎謹製の眼鏡を徹底解剖していきます。

泰八郎とは

山本泰八郎s

http://mint-kobe.jp/shopnews/8248/

山本 泰八郎は昭和17年福井県鯖江市生まれ。漆器職人の父を持ち、中学卒業後セルロイド職人に弟子入りしセルロイドフレームの眼鏡製作を始めます。

当時鯖江では眼鏡フレーム造りは分業、大量生産へ傾いていた時代でしたが、そんな風潮になじめなかった泰八郎は1977年に『山本手造り眼鏡製作所』をスタートさせました。

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http://mint-kobe.jp/shopnews/8248/

すべて手作業で丁寧に造る眼鏡フレームを造り続け、泰八郎55歳の時に金子眼鏡と知り合い「泰八郎謹製」のブランド名メガネでフレーム作り続けています

鯖江という街

福井県鯖江市は中学の社会でも取り上げられる日本における眼鏡(フレーム)生産の聖地です。なんど国内シェア96%を誇ると言いいますから驚きです。

つまり、日本製の眼鏡フレームの殆どは、この鯖江市で造られていることになります。

その歴史をさかのぼると、1900年のごく初期に農閑期の副業としてに個人が眼鏡を造り始めたという資料が残っています。明治になると、眼鏡作りも分業が進み、鯖江市の眼鏡生産の基盤ができあがっ手きます。そして、現在では世界三大眼鏡生産地といわれるまでに成長しました。

前述のとおり山本泰八郎は昭和17年、鯖江で誕生します。漆器職人を父に持ち、職人の街が育てた、生粋の職人に育っていきました。

セルロイドの魅力

セルロイドは1860~70年代に開発された史上初のプラスチック素材です。水や油,酸などに強く,彩色できる上に,比較的安価で耐久性と柔軟性を備えた成形可能な素材として,様々な分野の製品に使われています。

例えば、櫛,ブラシの柄,ピアノの鍵盤,めがねのフレームなどの商品に加工され,象牙,鼈甲などの天然素材に代わる手頃な素材として広く流通してます。

泰八郎は、3年以上寝かせたセルロイドを素材として使い続けています。寝かせることで十分に乾燥したセルロイドは変形せず、曲がりにも強いため、テンプルに金属芯を使用しない「ノー芯」という伝統的な製法が可能になります。

丹念に手磨きした温かみのある質感の泰八郎の作品は、鯖江市郊外の工房で月産200~230本という少量生産されています。

泰八郎の魅力

http://www.boq.jp/special/2008/taihachiro/index.htm

よく乾燥させたセルロイドはべっ甲のような艶と光沢が生まれ、そして丸みを持たせることができます。しかもゆがみが少ないこともあって、かつては眼鏡素材の主流でした。石油系のプラスチックとは違い、肌の馴染みがイイのだそうです。

最近は新素材や金属素材に押されて生産が激減していますが、独特の温もりと柔らか味のある感触が熱烈な支持を得ています。さらに、ビンテージライクなライフスタイルを好む若い世代が見直する素材です。

泰八郎謹製はセルロイドの生地から型出しに始まり、最後の行程まですべて自分の手の感覚を頼りに作り上げる、日本人ならではの気遣いが詰まったオールハンドメイドブランドなのです。

泰八郎謹製 プレミアム

メガネフレーム造りに限らず、修行期間の長い職人技の継承は、人口減少など後継者不足が深刻な問題になっています。

泰八郎謹製として以前はもう少し数多くのフレームを造っていましたが、高齢であるため生産を縮小せざるを得ない状態にありまう。現在、泰八郎謹製ブランドとして入手できるのはPremiere(プレミアム)シリーズと呼ばれるフレームだけになっています。

このPremiereシリーズは、現在 IからⅧまでが生産されていますが、それそれ色の展開が3〜4種類ぐらいあるようです。外見上の特徴はリム上の2つの飾り金具です。これは泰八郎謹製のアイデンティティーとも言えるものです。

この金具は純銀でできており、IとⅡが同じですが、以降Ⅲ〜Ⅴすべてデザインが違います。フレーム自体のシルエットもそうですが、このアイコンとも言うべき金具を選ぶ基準にされているファンもいるようです。

商品紹介

泰八郎謹製 (タイハチロウキンセイ)PREMIERE I

PremiereシリーズのⅠは、ウェリントンタイプ。しかしシャープな印象のフォルムを採用することで、世代を問わず相性の良い仕上がるになってます。対応は色別に3種類用意されているので、黒では強いとい方は、グレートーンを選びましょう。さらにクラシックなツートーンも用意されています。

泰八郎謹製 (タイハチロウキンセイ)/ PREMIERE III 

PremiereシリーズⅢは、Ⅰのウェリントンタイプに少し丸を与えたシルエットに仕上がっています。こちらのタイプなら顔の形との相性が広がります。画層はアオササというべっ甲のような色調ですが、黒一色、ツイート―ンも用意されています。

またこのモデルからリム上の2つの飾り金具のデザインが変化していきます。

 

泰八郎謹製 (タイハチロウキンセイ)PREMIERE IV

デザインはウェリントンというより、スクエアに近い印象が特徴的なⅣシリーズ。知的な印象が漂うデザインになっています。重厚感があるので、アイコンも負けないようにシッカリとしたデザインを採用しています。

泰八郎謹製 (タイハチロウキンセイ)PREMIERE Ⅴ

こちらもウェリントンタイプですが、リム上部を太くする事で強い印象が残るデザインになっています。しかし材質の柔らかさが残っているので、実際にかけてみると違和感はありません。

泰八郎謹製 (タイハチロウキンセイ) PREMIERE Ⅵ

前シリーズを踏襲しながら、原点回帰というかシャープな要素を感じさせてくれるデザインです。マジメなおのですが色香を残す、美しいデザインです。長く使いたい、ありそうで無かったデザインではないでしょうか 。

泰八郎謹製 (タイハチロウキンセイ)/ PREMIERE VII

デザイン的にはⅤに近い、しかしリムの輪郭に丸みを感じさせるデザインです。あまたあるメガネデザインの原点、基本形とも言える印象です。スーツスタイルからカジュアルまで守備範囲の広さはシリーズ1かも知れませんね。

泰八郎謹製 (タイハチロウキンセイ)/ PREMIERE VIII

前シリーズで丸さを採用した理由が、ここにきて極まったという感じです。シリーズでは珍しいボストンタイプが登場です。よりクラシックなデザインなのでビンテージライクなファッションに似合うだけでなく、最新モードにも負けない奥深さと個性が共存しています。

泰八郎が問いかける事

前述にもありますが、職人が作り出すプロダクトは後継者不足という深刻な問題を抱えています。さらに原材料価格の上昇、製品づくりまで3年以上寝かせるとプロセスは、生産効率という観点からみればマイナス要素でしかありません。当然、価格も上昇します。

ファストファッションやプロダクトは安価で便利です。泰八郎はその対極にあります。しかし手作りでなければ出せない味わい、それらを残していかなければ次の創造にはつながらないと思います。いい意味での無駄や寄り道を繰り返すことが必要です。

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