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「トリッペン」。ドイツが生んだコンフォート系シューズの傑作

コンフォート系シューズ数々あれど、ビルケンシュトックとトリッペンが双璧を成しているということに異論を唱える人はいないでしょう。

どちらもドイツのブランドですが、前者がサンダル、後者がシューズという印象が強いように感じます。そして前者には創業240年という歴史が作り上げる奥深さがあり、後者はそうしたジャーマニーDNAを受け継いで磨き上げたキレの良さを感じます。創業は1992年、急成長する姿を追いました。

愛おしい。手のひらに収まる丸み、弾むような質感。

http://www.naturalwear.jp/SHOP/BORDER-WAW.html

12~3年前だと思います、知人が経営するセレクトショップで初めてトリッペンを目にしました。当時はオールデンやエドワードグリーンのような正当派の靴が主流であったこと、洋服の傾向もきれい目な方角を向いていたこともありあまり関心はありませんでした。

しかし、以下のようなことを通じて身近に感じるようになりました。そして実際に足入れしてみると支持される理由とシンクロして、愛おしさを感じるようになりました。丸いフォルムが特徴的なので若い世代のものと思われがちですが、実はミドル世代こそ味の出るシューズブランドなのかも知れません。

先輩方の履きこなす姿に take IVY を見た。

https://www.amazon.co.jp/Take-Ivy-Teruyoshi-Hayashida/dp/1576875504

1960年代のアメリカ、主に6つの大学のキャンパスファッション「アイビー」が日本に紹介されると、当時の若者を席巻しました。その後、アイビーファッションのバイブルとして「take IVY」が刊行され、若々しく清潔感のあるスピリッツが支持され、日本人とアイビーは独自の関係を保っていきます。

その中心にいたのが団塊の世代、昭和20年代生まれミドルエイジの先輩方です。バブルの隆盛とその後の悲哀を経験しますが、彼らこそファッションに限らず「いいもの」を見分け、生活のスタイルを築いてきた世代だと思っています。

http://vintage-room82.blogspot.jp/2012/01/take-ivy.html

それまでは、ローファーといえばBassだとかコンバースはワンスターだと言っていた世代が『それでは自分たちに若すぎる。』と手を伸ばしたヨーロッパブランドにトリッペンがあったようです。そしてその履き心地、柔らかな質感、すでにスタイルを確固たるものにした彼らにとってブランド名の有無は関係なかったのでしょう。

彼らミドル世代が長く履きこんできたコッパンや501にトリッペンを合わせる姿は実にかっこいいのです。そして力の抜けた振る舞いはなんとも潔い。スピリッツとしてtake IVY を実践しているからでしょう。ミドル世代予備軍としては是非ともお手本にしなければ、そして身につけなければいけない所作なのかも知れません。

カミさんや大切なパートナーとの散歩やドライブに最適です。スニーカーのように走れます(実際は走りませんが・・)。履きこむほどに味わいが出て、リペアも可能だとか。丸みを帯びた形やデザインだけでなく、心から愛おしく感じるブランドとして人気なのも納得です。

トリッペンの歴史 実は若々しい、躍動感溢れる企業でした。

https://en.trippen.com/geschichte

オフィシャルサイトによると『trippen(トリッペン)は、靴職人のマイスター(特別技術資格者)で、医療用矯正靴などの製作にも携わっていたミヒャエル・エーラーと、それまでも靴や服のデザイナーとして活躍していたアンジェラ・シュピーツの2人によって1992年ベルリンの小さなギャラリーで誕生しました。』とあります。なんと!創業30年ほどの若い企業なのです。

https://en.trippen.com/geschichte

しかし、1996年・2000年の2度にわたり、本国ドイツ・シュトゥットガルトの国際デザインセンターからデザイン賞を受賞、また米国や日本でも数々のデザイン賞を受賞するなど世界的な評価を得ることになります。そして2007年には、ヒールの高い新型ソールX+OS(エックスオー)コレクションが2つのデザイン賞を受賞して知名度は一気に広がります。

日本との関係も深く、ヨージ・ヤマモト(山本耀司)のコレクション用シューズを手掛けて評判になると、有名ブランドとのコラボレーションを展開し、さらなる実績につながっていきます。この辺りのマーケティングは服飾のデザインをしていたアンジェラの手腕によるところだと想像できます。

http://blog.livedoor.jp/yadb/archives/52454830.html

日本進出も早く、1997年9月直営第1号店を原宿をオープン。同年11月に代官山。現在では原宿・代官山・二子玉川・名古屋・神戸に直営店を構えるほか、京都、福岡にインショップを展開。ほかにもセレクトショップなどを中心にネットワークを構築してファン拡大につなげてます。

すべてのショップにトリッペンの『生産者は、環境・消費者・労働者 全てに責任を持つべきである』という理念が行き届いていて、ファッションに限らず「いいもの」を見分け、自然体で生活しようとする層に大きな支持を得るようになっています。

トリッペンの特徴

吸い付くような素材は植物性タンニンに理由がある。

http://www.e-amuser.com/trippen.html

amz・asp・bglなど現在18種類の素材~染色を使い分けて商品ごとの個性作りに生かしています。共通するのは独特のやわらかさ、手になじむ(足になじむ?)肌触りのよさです。植物性タンニンを使う事で環境にも配慮することで、独特の風合いが生まれました。

タンニン材によってはアレルギーを発症するユーザーがあるため、お気にいりのデザインであってもお勧めできない場合があるそうです。もの作りの責任について痛感させられる姿勢です。

ソールなどリペア可能なパーツが揃っている。

http://kutsu-labo.seesaa.net/category/7061597-1.html

オフィシャルサイトにリペア料金が明記されているように、アウトソールの擦り減りやステッチのほつれなど、細かい対応が可能です。直営店または購入したお店に持ちめば迅速に対応してくれるようです。

「きちんと手入れをすれば10年間は保ちます」「ただ美しいだけのリサイクルの早いものには満足できない、クリエーターとしての責任感です」ここにもトリッペンの理念があります。

もの作りの基本。自分たちの目の届くところで作る。

https://de.trippen.com/startpage

トリッペンはドイツの自社工場と、イタリアの限られた工房のみで作られています。アジアや中米など人件費の手頃な工場へ委託することはありません。お客様に満足いただける品質で商品を提供するには、目の届きづらい工場では困難だと考えているのです。

手作業を中心に丁寧に作られるトリッペンの製品は大量生産は不可能です。正確な作業を誇る本国ドイツの職人たちと、感性に優れたイタリア人との混成チームならではの偉業なのです。独伊というと20世紀初頭のきな臭さを思いだしますが、結束力の強さもDNAに起因するものかも知れませんね。

定番アイテム紹介

レースアップシューズ DERBYBOX

使いやすい代表格。トリッペン初級者におすすめの一足です。

 GOLF パンチングレザー

少々個性的な面立ちですが、オーセンティックなコーディネイトのアクセントにいかがでしょうか。紹介するのは黒ですが、白であれば取り込みやすいかも。

モカシン レースアップ

カジュアルな印象が強い、モカ縫いが個性的なモデルです。コンフォートシューズらしい疲れ知らず、快適な一足です。

レースアップシューズ HAFERL-BOX CLOSED

外羽の幾何学的なパターン、紐の通し方などユニークな特徴が楽しい一足です。幅広のチノパンをロールアップして。

レースアップシューズ BORDER-WAW

側面の白いラインが若々しさを演出してくれます。鮮やかなアーガイルソックスで楽しみましょう。

 

トリッペンが向かう先 靴の未来が見えてくる。

http://rebirthproject-store.jp/?mode=f16

履き心地がよく、まさにコンフォートシューズなのですがデザイン的にはどうしてもカジュアルな印象がぬぐいきれません。なので現時点でビジネスでの利用は難しいかも知れません。しかしオフィスのカジュアル化が進み、就業時間や場所に捉われない「働きかた」が一般的になれば、トリッペンのようなシューズがスタンダードになるのかも知れませんね。

若い企業ですが、その奥底にはドイツそしてイタリアの歴史が大河のように流れています。大らかに、そして時に激しく。流れの行き着く先には、どういった産物があるのか。AIやIoTといった時流さえも容易く取り込んだ姿を提案してくれるのかも知れません。