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立体的なシルエットを作る!ジャケットをかっこよくするアイロンがけ
シャツやトラウザーズと違い、スーツジャケットの場合は折り目を付けずにアイロンがけします。ここではシルエットを重視した立体的なアイロンがけの方法を紹介します。
今回はレディースジャケットを用意しました。レディースジャケットの場合は曲線が多くアイロンがけの注意点がわかりやすいです。(このジャケットはボタンが付いていませんがボタンをよけるようにしてかけましょう)
用意するもの
縫製工場では立体的なプレス機や高温スチームのアイロン、バキュームおよびブロアー装置がついた特殊なアイロン台を使います。これらの道具はジャケットのシルエットを美しく作るのに欠かせませんが、しわ取りをしてきれいに仕上げるだけなら家庭用のアイロンやアイロン台でも十分きれいな状態に仕上げることが出来ます。
アイロン
使うアイロンはどんなものでも構いません。ただし家庭用のスチーム機能だけでは蒸気量が十分ではないので、できれば霧吹きを用意するのがおすすめです。またコードレスよりもコード付きの方が温度が変わらないのでおすすめです。市販のものではティファールのアイロンがプロ仕様のものと遜色ない量の蒸気が出るようです。やや高額ですが手が届かない値段ではありませんので購入を検討しても良いと思います。
アイロン台
アイロン台は家庭用のもので問題ありません。毛布を折りたたんで布を敷くなどしても良いですが、毎回のことなので購入した方が良いです。家庭用のアイロン台にも様々な種類があり、今回使用したものはボタンの部分が沈み込み、アタリ(痕)がでないようになっているものです。また肩や袖の形をしたウマがあれば便利ですが、無くても大丈夫です。また、アイロン台はウォータースポットで汚れやすいので上から布をかけて安全ピンで止めておくと、布を取り換えるだけで後々まで綺麗に使えます。
霧吹き
霧吹きは洗濯用品売り場に置かれている細かい霧がでるものが良いです。霧の細かくないものだと大きい水滴が出て輪染みや水染み(ウォータースポット)になる恐れがあります。ウォータースポットはアイロンがけの際以外でも気をつける必要があります。素材は絹やレーヨンだとウォータースポットができやすく、特にレーヨンはスーツの裏地や表地に混紡されている場合が多いですので気を付けましょう。
当て布
スーツをアイロンがけする場合はコテ光り(テカり)を防ぐために当て布をします。綿のハンカチで十分ですが、面積が狭いので70cmくらいのサラシを使うと便利です。できれば両端は縫っておきましょう。
アイロンがけの注意点
どんなものでもそうですが布を使った品物や衣類は生地の地の目を整えます。地の目が整っていない(生地のゆがみ)場合は見た目にみっともないですし、型崩れする恐れがあります。そこでアイロンがけも生地の地の目を意識して行います。アイロンがけでは正しいセットが重要です。そしてこれが、立体的なアイロンがけのコツです。
また、生地は乾くときに形が決まります。なのでアイロンした直後はすぐに動かさないで冷まします。めくれるのでやりづらいですが扇風機を上からあてながらかけると早いです。それから力を入れるとテカりやゆがみの原因になりますので、力は入れずにアイロンの重さで重力に沿って上から下向かってかけるようにしましょう。取れにくいしわには蒸気を多めにあてて取ります。
アイロンの温度
ジャケットは左の内ポケット内に洗濯表示が入っているので、それに準じましょう。一般的にスーツのジャケットはウールが多く、中温(140℃~160℃)が基本ですがアイロンの温度設定がダイヤル式の場合は130℃にしておくと問題ないです。
アイロンがけする順番
袖→裏地→襟→後ろ身頃→脇身頃→前身頃→ラペル
身頃をかけるときは霧吹きを全体的にかけておくとやりやすいです。ただし裏地に蒸気はかけませんので気をつけましょう。(裏地はシミになりやすいです)
袖
袖は袖山の頂点から親指の方向にかけて地の目が通っています。丁度スーツの採寸の際に計る場所と同じです。袖は面積の大きい上袖と面積の狭い下袖に分かれているのでそれぞれに分けてかけていきます。
1.下袖
下袖が決まるとシルエットが整いますので一番気を使います。難しいのですが最初に袖口と縫い目を直角になるように置きます。この際は袖ぐりから手を入れて少し浮かすようにします。アイロンをかけるキワは折り目をつけないようにしましょう。この時は袖先を左に置きますのでアイロンの向きが逆になりかけづらいですが、この方向でかけます。キワをあらかじめアイロン台から外す落とし込みの方法を使えば折り目が付く心配はありません。
下袖は2回に分けてかけます。最初は縫い目をまっすぐに、次は地の目に沿って置きます。この置き方はハンガーにかけたときの自然な形になります。
2.上袖
上袖は仕上げとしてかけます。まずは袖の縫い目にアイロンをあてます。次はハンガーにかけた自然な形になるようにセットしてかけます。
3.袖口の裏地
最後に袖口をめくって袖口の裏地を整えます。袖口の裏地はキセがかかって1センチほど遊びがありますので、その状態をならして折り目をつけます。
裏地
裏地はアイロンを低温(80℃~130℃)にして蒸気なしで使います。一度折り目が付くとなかなか取れないので気を付けます。
また袖の裏地は見えない部分ですがシワが取れているとスムーズにジャケットを着ることが出来ます。袖の裏地は、袖をくるくると回しながらさらっとあてます。その際は反対側にシワをつけないように気を付けてください。
また同じように身頃の裏地もかけていきます。この際は最初に背のキセを整えます。背中心の縫い目をピンと張りながらかけるとうまくいきます。また袖先や裾の裏地は全てかけ終わった後に仕上げるのでこの時はかけなくても良いです。
最後は見返しをかけます。見返しは素材が表地なので温度を中温にして蒸気を出し、あて布をしましょう。
襟
本来は重力の方向に沿って行うアイロンがけですが、襟の場合は横長の形に添ってかけます。台襟がある場合は台襟をまっすぐにして先にかけます。このとき襟をつぶさないようにアイロンの先を使いましょう。それから襟をセットします。襟はアタリがつきやすいのでアイロンは裏襟だけでよいです。もし表側に気になるところがありましたら蒸気で整えましょう。
後ろ身頃
後ろ身頃は肩甲骨のあたりがカーブしていますが、最初に背中心をまっすぐにセットします。肩の部分は、はみ出るのでアイロン台の角にはめ込むような形で再度セットします。ベンツがある場合は最後にベンツの部分だけをセットして上下一枚ずつかけます。この時かぶるほうのベンツにアタリが出ないように気をつけましょう。
どんな場合でも生地を引っ張ると伸びてしまいますが、縫い目だけは縮みやすいので引っ張り気味にします。特にベンツは張ることを意識するときれいに仕上がります。
脇身頃
脇身頃は小さいパーツですがしっかり押さえます。中心を意識して綺麗にセットします。縫い目にきちんとかけて袖繰りのカーブも沿いましょう。
前身頃
前身頃はパネルラインと脇側の2回に分けてかけます。最初はパネルラインをまっすぐにしてセットし2回目は脇を逃がす形になります。メンズジャケットはレディースよりもカーブがきつくありませんが全てを平らにすると立体感がなくなってしまうので気をつけましょう。最後に身頃の仕上げとして裏地の裾を整えます。
襟・ラペル
ラペルは折り返して形を整えます。まずは襟の線を決めます。襟は台襟(ない場合はステッチ)の上1cm程度のところで折り返し中心を決めます。それからラペルを折り返してゴージラインの1cm下までを押さえていきますラペルは引っ張ると伸びるので特に慎重に扱いましょう。
ラペルの形の決め方
ラペルにアイロンをかける際は、あらかじめついていた折り線に沿いましょう。どうしてもわからない場合はボタン・ボタンホールの位置を目安にします。ラペルの境目は生地の出方が違いますので、それを目安に折り返します。
仕上げ
アイロンがけが終わったジャケットはハンガーにかけて仕上げします。袖は袖先を張り、裾も張りながらアイロンで蒸気をかけます。このとき縫い目を張ると伸びません。
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