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プラダを纏った「チャーチ」の革靴。新たな魅力で手招きする。

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クラシックで英国靴の代表という印象が強いチャーチですが、5年ほど前でしょうかシャンガイというモデルがローンチされると、そのチャーチらしからぬ押し出しの強いデザインが注目されました。また女性向けにはメダリオン代わりにスタッズを施したメンズライクなモデルがリリースされて大きな話題となりました。

http://pannabaybrook.blog19.fc2.com/blog-entry-1533.html

スタンダードなデザイン、丁寧な作り、そして良心的な価格で支持されていたチャーチに大きなうねりが起こったのは1999年の事でした。それまでの軌跡とこれからの展望を探ってみました。

 

オールドチャーチという誉れ そして新天地での雄たけび

http://ciento.jugem.jp/?eid=2709

ご存知の方も多いと思いますが、正確にはCHURCH’S=チャーチーズと発音するようです。当初は大塚製靴が輸入していましたが、その時点でチャーチと紹介されて広まった?と言われています。

創業 ニューヨーク出店 日本上陸

http://www.church-footwear.com/it/en/heritage

チャーチは1873年ノーザンプトンで創業します。頑固な英国靴ブランドらしくグッドイヤーウェルトを採用し、250にも及ぶ工程、完成までに8週間を要して製造されます。丸みのある、やや野暮ったいデザインが評判になりました。足の形状に合わせて左右非対称にしたり、サイズを0.5刻みにするなど現代に通じる革新的なメーカーでもありました

販路も野心に富み、1930年頃にはニューヨークに出店済みで、当時は隣がブルックスブラザーズであったため、ブルックスでスーツを買ったら、足元はチャーチで仕上げるというのがお約束になっていたようです。早くからヨーロッパやアメリカへの進出に積極的な姿勢がありました。

日本初上陸は1965年、大塚製靴が手掛けて輸入されます。エドワードグリーンやジョンロブが本格輸入されるは1980年代なので、英国靴の魅力をチャーチに教わったというユーザも多いようです。定番の木型を長く用い、実直とも言える製品を作り続けますが、1999年プラダグループの傘下に入ることになります。

チャーチ信者 オールドチャーチの魅力

https://muuseo.com/square/articles/171

チャーチ信者は、この買収前のモデルを『オールドチャーチ』と呼び信奉していて、中古市場やデッドストック探しに心血を注いでいると言います。彼らは現行チャーチの魅力は理解出来るものの、旧チャーチにしかない野暮ったさや無骨さは変えがたいと言います。

https://muuseo.com/square/articles/171

ふたつの違いを見分ける方法は、インソック(中敷き)にプリントされたロゴにあります。オールドチャーチのインソックには LONDON・NEWYORK・PARIS の3都市名が刻まれていますが、現チャーチにはMILANが追加されています。またPARISのない時代、さらにNEWYORKのない時代のものもあるのだとか。いずれにしてもプラダにとの連携は大きな転機になったようです。

世界が注視する、新生チャーチ

http://wgib.blog88.fc2.com/blog-entry-2.html

新天地でのチャーチですが、基本的にはこれまでの流れを踏襲しているようです。しかし旧デザインの復活や、モダンな解釈でブラッシュアップしたモデルの発表で注目を集めます。

例えば『シャンガイ』。何年も履き続け、しかも手入れも感じない、ソールも片べりしたよう。汚れも浮かんでいます。しかし、この脱力感がイタリア男に評判となり世界に及びます。日本でも相当話題になり雑誌を賑わせました。このモデルもチャーチの古いアーカイブからインスパイアされたものだとか。プラダの審美眼が立証されたのでしょう。

https://ameblo.jp/wa-ginza-b2f/entry-12062002654.html

もうひとつはメタルスタッズを使ったフルブローグです。モデルになったのはチャーチの定番BURWOOD(バーウッド)。飾り穴部分にスタッズを埋め込むというアバンギャルドな解釈ですが、見た目ほどゴツさはなく品のいい足元が出来上がります。このレディースが発表されるとゴツいのに可愛いと評判がたちまち蔓延します。まるで事件のように拡がりました

他にも映画007で活躍するダニエル・クレイグが愛用するモデル=SHANNONが評判になるなど、新体制の庇護のもとで、新生チャーチの勢いはおさまる事はありません。さらに老舗メゾンのマーケティングはレディース市場へ積極的に乗り出します。日本では雑誌撮影へ協力、またドラマへの衣装提供という形で露出を増やしています。

https://www.instagram.com/p/BizRVveHLcO/?hl=ja&tagged=churchs

ドラマや撮影ですっかりファンにになった女優やモデルも多いのだとか。彼女たちがプライベートで着用する様子がインスタグラムなどのSNSで広がり、オールドチャーチ時代では想像できなかったマーケットが生まれ始めてします。確かなもの作りと、時代を作り出す経営手腕が合体して、産声から雄たけびに成長を遂げました。

 

定番アイテム紹介

http://www.church-footwear.com/it/en

SHANNON (シャノン)

決して過ぎない、しかし均整のとれた体躯。トムフォードのスーツを艶やかに着こなすダニエル・クレイグの足元はシャノンが引き締めます。スーツスタイルとの相性はもちろんですが、デニムとも違和感はありません。敢えてダメージ入りに合わせることで、大人の余裕を印象付けることができます。

DIPLOMAT(ディプロマット)

DIPLOMAT=直訳すると外交官っという意味だそうです。ブラウンという事もあり、物腰の柔らかい、しかし交渉事には妥協を交えないセールスマネージャーなどにお似合いかも知れません。メダリオンが施されていますが、カジュアルな印象はありません。敢えてネイビーのスーツに。

 

CONSUL(コンサル)

内羽のストレートチップ、しかも黒。至ってマジメな一足です。こういうタイプは遊びなど交えず、ごく普通に、スタンダードに使いましょう。当然メンテナンスは怠らないで。

 

CHETWYND (チェットウインド)

上記DIPLOMATに、カントリーテイストをボリュームアップさせた印象です。しかしノーズをやや長めにとることで野暮ったさは感じません。足元にボリュームを演出できるので、最近の傾向であるプリーツ入りのパンツとの相性が良さそうです。

 

BURWOOD (バーウッド)

もっともカントリーテイストが強い、オールドチャーチを思わせる顔つきです。メダリオンの口径もやや大きく感じます。このモデルにスタッズでレイアウトしたモデルが話題になりました。しかし見て分かるように、オリジナルの完成度があるからこその成せる技なのです。

 

道はひとつと限らない。変わらず『チャーチ』であり続けるために。

http://www.church-footwear.com/it/en/collection/men/EEC0449SNF0VZA

事業・経営的にはつらい時間を経験したチャーチですが、プラダの傘下入りという事を経て、技術や伝統というブランドの根幹は守ることができました。そして旧体制では経験できないステージにも上ることが出来たのではないでしょうか。伝統は守るだけでは継承できないもののようです。

ミニクーパーもBMWのエンジンを搭載することでシフトアップにつながりました。プラダ自身も経営不振に喘いでいた時期が長くありました。しかもプラダは、映画のように悪魔でも性悪でもありません(もちろんジョーク)。風通しのいい事業展開でなければ、伝統はかび臭いままです。大きく窓を開けたチャーチの活躍から目が離せません。