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明治起源の「大塚製靴」。年代物のシングルモルトを思わせる芳醇な色香

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鹿鳴館華やかな頃の創業と言いますから、既に140年以上、大塚製靴は靴作りを通じて明治、大正、昭和そして平成という時代に関わってきました。ですから現在活躍する靴業界の住人は法人・個人を問わず大塚製靴との関わりをもっているのではないでしょうか。長きに渡り要人たちの靴に関わってきました。数も質も多種多様。しかしその蓄積がさらなる進化に結びついています。どこまで探ることが出来るでしょうか。お付き合いいただければ嬉しい限りです。

時代を超えて評価されるには、常に前進しなければいけない。

http://openers.jp/gallery/1428545

創業以来、大塚製靴が目指すのはただひとつ、日本人にとって履きやすい靴を作るというだけです。

宮内庁御用達、各皇族の方々また古くは華族の方々にご用命をいただくという事は大変な栄誉です。また政界・財界の要人の方々にもご寵愛いただいております。文人・芸術家やマスコミ等で活躍する著名人にもご指名をいただくことが多々あります。それは現在も変わっていません。

http://ochimusha01.hatenablog.com/entry/2016/07/26/083551

しかし、大塚の靴はそうした特別な方々だけの、特別なものではありません。日本人みなが共有出来る、快適な靴でなけければいけないという理念が根底にあります。先に挙げた方々の靴を謹製することで、大塚には様々な情報やノウハウが蓄積していきます。

それは既成靴や他のコレクション作りに生かされる糧となります。さらに日本人は生活様式の変化にともない、体格が著しく変化しています。特に戦後、高度成長期を経ることで著しい変化がありました。身長・体重の変化、骨格の変化は、それらを支える足の変化につながります。

https://twitter.com/hashtag/%E5%A4%A7%E5%A1%9A%E8%A3%BD%E9%9D%B4

車社会が歩くという行為を減らしました。舗装路が隅々まで延伸しています。木型の修正、材質選びはもちろんのこと、今の日本人にとって快適な靴を作り続けるには変化を見据えた『前進』が不可欠なのです。

140年前と作る工程は同じでも、多様な変化に応じた製品作りを心がけているのです。しかし機能性だけを求めているのではないようです。服飾の側面も忘れることはありません。

https://www.imn.jp/post/108057197959

クラッシクではあるけれど懐古を偏重するものではありません。時代を見渡す余裕をもち、流行に左右されることはありません。一歩先ではなく、一段高みからの視点を大切にしています。頑固と偏屈とは違います。主張過ぎず、引き際は鮮やかに。そうした思いが時間を経て、いい塩梅に発酵・熟成。すると目指す光に近づくのです。

大塚の歴史 流れを読む力、しかし決して流されることはない信念

https://kusumin.com/%E5%A4%A7%E5%A1%9A%E8%A3%BD%E9%9D%B4/

140年の歩みをエポックだけを拾い、年表にしてみました。

1872年(明治5年) 現在の港区新橋に革靴(手縫い)の製造販売を行う大塚商店を創業
1882年(明治15年) 皇室より明治天皇の靴を依頼
1884年(明治17年) 海軍より水兵用の靴を受注
1886年(明治19年) 陸軍より軍靴を受注

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1889年(明治22年) パリ万国博覧会に出展 銀牌を受賞
1922年(大正11年) 高級紳士靴の製法を代表するグッドイヤ式製靴機械一式を導入
1950年(昭和25年) 株式会社に改組、大塚製靴株式会社に社名変更
2001年(平成13年) 組織の再編成『クツのオーツカグループ』が誕生
2002年(平成14年) 創業の原点に立ち返り、注文靴中心のコレクションOTSUKA M-5をスタート。
2002年(平成14年) 11月1日には直営店「シューマニュファクチャーズ [オーツカ]」を六本木ヒルズ4階に オープン。ビスポークの受注が可能に。

先見の明があったのでしょう。明治が開け、西洋文化の良さをいち早く理解し、より良い靴を作ることに邁進します。その努力は認められ、創業わずか10年で皇室の目にかないます。その功績から当時権力を握る軍への納品につながります。皇室そして軍との関係を保つことで、それらを取り巻く様々な関係に発展していくのです。

そして軍需を通じて事業は拡大していきます。敗戦後もそれまで培った技術を生かし、常に日本人の足元を支えてきました。戦後の混乱から高度成長期、消費者ニーズの多様化にも柔軟に対応できたのは、創業当時のDNAが残っていたためではないでしょうか。

http://openers.jp/article/1428546

そして100年以上の歴史を重ね十分に発酵した上で、注文靴(M-5など)という原点に立ち戻ろうとしています。それは安易な回帰ではありません。やはり先見の明、次の光を感じ取った選択なのだと思えてなりません。

大塚製靴の特徴 日本靴の完成形は、いつかここから生まれる。

https://precious.jp/articles/-/3817

製法や素材選びについては、細かいところまで行き届いています。オフィシャルサイトに詳しいのでそちらを参照していただくとして、ここではそのエッセンが詰まった2つのコレクションの特徴をお知らせすることで理解を深めてもらえればと思います。

OTSUKA M-5

http://www.shoe-collection.jp/fs/shoe/M5-001

サンプルモデルを提案して、受注生産するというシステムです。すべて手縫いを基本としていて、詳しい製法や素材、商品ごとの特別な仕様は明記されています。どの項目も靴好きならわくわくするような言葉が並び、読み込むほどに物欲の上昇を抑えることが出来ません。多くの商品は納品まで約1年を要して作られます。

素材も稀少を極めるため、サンプル提案がリリースされるとまたたく間に『受注終了』となるほどの人気です。価格は素材によって大きく違いますが、このクロコダイルを使ったホールカットは税別55万円。タイミングを逃せば、二度と入手は困難でしょう。ちなみにM-5とは明治5年創業ということを意味し、先達への賛歌~オマージュとして名づけられました。

シューマニュファクチャーズ[オーツカ]

http://www.roppongihills.com.t.nt.hp.transer.com/ko/shops_restaurants/shops/00037.html

こちらは2012年六本木ヒルズにオープンした大塚の直営店です。さながらサロンのような様相でM-5シリーズや、大塚が手がけるGrensonなどのインポート商品が靴好きを手招きしています。展示点数は約150足、贅沢な空間は、靴好きでなくても居心地のいい酒場のようです。

このショップでは大塚が提案するビスポークを味わうことが可能です。創業以来の理念である『日本人にとっての快適な靴』がここから生まれるのです。そのほかにもサンプルを用いたハンドソーン、また一部に機械縫いを交えたものなど、お客様本位の商品を味わう事が出来ます。少々敷居が高いかも知れませんが、一度は訪れたいマチュアな空間です。

http://www.otsuka-shoe.com/cms/%E5%85%AD%E6%9C%AC%E6%9C%A8%E3%83%92%E3%83%AB%E3%82%BA%E5%BA%97%E8%81%B7%E4%BA%BA%E5%9D%82%E4%BA%95%E5%BC%95%E9%80%80%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E5%8F%97%E4%BB%98/

製法・技能は工場で共有すると言うのも大塚の特徴です。職人が個人的にスキルを深めていくのは使命であり当然の流れです、しかしそれを受け継ぐものがいなければ、技術や技能は広がりません。今風に言えばネットワークで共有するということ。協業を大切にすることで完成に近づくのです。

大塚製靴の代表作をご紹介

大塚が手縫いを中心に仕上げるコレクションは、現在ネットを通じて購入が可能です。しかも専用サイトのみという徹底振り。代表作を数点ご紹介いたします。

https://careginza.exblog.jp/20323641/

M5-102 ボタンブーツ ブラック/ブラウン

https://item.rakuten.co.jp/otsuka/c/0000000104/

大塚コレクションを代表するボタンブーツには、デカダンスが香ります。クラッシクな装いに最上のアクセントです。遊び尽くした御仁にお似合いです。

M5-230 内羽根ストレートチップ

https://item.rakuten.co.jp/otsuka/c/0000000163/

ふっくらとしたラインがなんとも可愛らしい。しかし土踏まずを絞りこむことで熟度を増した仕掛けも忘れていません。一度踏み入れたら戻るのは困難です。心して付き合いましょう。

M5-246 内羽根クォータブローグ

https://item.rakuten.co.jp/otsuka/c/0000000280/

わがままで、気位が高い。扱いづらい感は否めませんが、馴染むころには決して手放せない存在になっている。枯れたぐらいの年齢で履きたい1足です。

M5-217 ダイナイトソール内羽根ホールカット

https://item.rakuten.co.jp/otsuka/c/0000000133/

贅沢な素材使いでありながら、ソールはアクティブなダイナイトを使うというアバンギャルドな1足です。履きじわを楽しむ。そして、お手入れも抜かりなく。長く付き合いたい相棒。

M5-309 ダイナイトソール内羽根ストレートチップ

https://item.rakuten.co.jp/otsuka/c/0000000172/

ビジネスだからと言って戦い続ける必要はありません。戦士にも休息は必要です。明日のために足元を見つめる。頼りなる同輩がそこに居ます。

大塚DNAは揺るがない。紆余曲折も道なのだから、まっすぐに進む。

https://www.hankyu-dept.co.jp/mens/blog/04/00079047/?catCode=501001&subCode=502004

残念ながら、ここで紹介した大塚の商品を実店舗で見ることは出来ません。ネットもしくは百貨店やセレクトショップのインショップイベントという限られた機会しかないのです。

ですから、大塚といえば多く市販されてしるウォーキングシューズを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。それらも、またここで紹介した手縫いのものも、商品としての根っこは同じ。「日本人にとって快適な靴を作る」という創業以来のDNAは揺るぎません。

生活のシーン、年齢、環境などに合わせて選択するだけです。ただ手縫い商品群ののぼり立つような芳香は140年にわたる歴史と、携わってきた職人たちの歩んできた道がたどりついた成果だと感じます。