記事更新日:
「サントーニ」イタリアらしい革靴、彫りの深い美しさに見惚れる。
常々思うのですがイタリアという国はまったくズルい。
産物にしても歴史にしても文化芸術にしても、その多くが明け透けで遠慮がありません。『美しいものは、ただ美しい』と。素直といえば素直なのですが。波乱に満ちた歴史への反面教師なのでしょうか?それとも地中海に面した気候風土のせい?サントーニも同様、自らの存在を素直に語ります。
しかしその一途さがいつしか心地良さに変わってくるから不思議です。自由と捉えるか、反骨と感じるか?いや単にズルいだけなのか?自身の感性でまっすぐ受け止めるしかありません。
さてさてサントーニ劇場の開幕です。
サントーニは正統派のモテ靴 端正なベビーフェイス
https://therake.com/stories/style/what-makes-santoni-shoes-special/
たとえば同じデザインの靴を製造国別に並べ、女性に人気投票をするとします。黒のストレートチップ、内羽式。それぞれ英国、イタリア、アメリカ、日本で製造されたものです。イタリア推しの票が多く集まるのではないでしょうか。理由は明白、『美しい、キレイ』だからです。総じてイタリア靴はモテるのです。
そうした観点は車作りにも見ることが出来ます。イタリアは車のデザインにおいても、美しさへの探求という点で妥協はありません。デザインはもちろんですが、美しく走れるかということも大切な要素です。フェラーリやアルファ・ロメオ、そしてマセラティ、男女問わず多くのため息が聞こえるほどです。
http://www.vimala.co.jp/spazioshop/italiancarlife/life.htm
そうした厳しい審美眼の中でも、サントーニの個性は際立っています。
美しさと、若々しさを備えているといえばいいのでしょうか。その危うげなバランスが魅力になっているのかも知れません。サントーニは1975年創業という、とても若いシューズメーカーです。わずか40年ほどで高い評価を得て、世界的な市場を拡大する躍進振りです。
https://www.fashion-press.net/news/8608/2
この短い期間で成し遂げたさまざまなチャレンジ、たとえばメルセデスAMGとのコラボレーション。さらにIWCへのオマージュともいえる商品開発。挑発的なヒールが美しいレディースコレクションのリリースと拡充。若いメーカーならではの自由な発想と、イタリア人ならではの情熱がブランドの成功に結びついています。
常に相手を、とくに女性を楽しませるという事を忘れません。ベビーフェイスと侮る無かれ。饒舌なデザインと巧みな製法、頑なに守り続けてこそサントーニと言えるのです。
サントーニの歴史
土地に宿るもの作りへの探究心が、サントーニを産み落とした。
本格靴と言われるシューズメーカーの多くは100年以上の歴史があります。それは英国でもイタリアでも同じこと。職人気質の創業者が立ち上げ、頑固一徹、そのもの作りが評判を呼び確固たるブランドに成長していきます。
クオリティの高さはもちろんですが、こうしたストーリーがブランドを支えていると言えるのではないでしょうか。
一方、サントーニは1975年靴職人のアンドレア・サントーニが創業します。わずか40数年前のことです。
注目したいのは、創業した街”マルケ州”です。英国靴の聖地は”ノーサンプトン”、誰も異論はないでしょう。
同じようにイタリア靴にとっての聖地は”マルケ州”だと言われています。5000以上の皮革製品のメーカーがが集まり、関わる従業員数は5万人以上です。ドライビングシューズの代名詞トッズをはじめ、世界屈指の高級ブランドが軒を争うようにひしめいています。
そうした環境で暮らす靴職人が、自身の工房を立ち上げることは必然だったのかも知れません。
巧みの技術を支えてくれる、さまざまな職人たちの協力や支援があったと思います。
そして職人通しのつながり、人情。それはこの土地、マルケに宿る魂(スピリッツ)だったと言えるのではないでしょうか。
https://www.fashion-press.net/news/8608
時代に切り込んだ、頼もしき二代目
手作りの高級靴という基軸を保ちながら業績を伸ばし、連邦制が崩壊し活況にわく旧ソ連にも市場を拡大していきます。そして1990年代に経営を息子ジュゼッペへ委ねるという英断が、サントーニを国際ブランドへと飛躍させることになります。
ジュゼッペはマーケティングと時代を読む嗅覚に優れていたようです。
コレクションの幅を次々に拡大していきます。女性靴への参入、鞄や財布などの革小物の製造も手掛けるようになります。そして特筆すべきは、ラグジュアリーラインのスニーカー製造に乗り出し、大きな反響を得たことでしょう。そして”HERMES”のレザースニーカーのOEM生産にも腕をふるうことになります。
ジュゼッペは早い時期からに日本進出を計画してようです。代表就任早々来訪しマーケティングを繰り返したという苦労話を見つけることができます。
しかし時代はサントーニに追い風だったようです。バブル崩壊が一段落した日本にクラシコイタリアという波が押し寄せます。丈の短いジャケット、細身でくるぶし丈のパンツ。足元をロングノーズのモテ靴が引き締めます。雑誌ではイタリア靴の特集が組まれ、サントーニはファッション好きにとって羨望のまとになっていきます。
2017年4月ついに日本旗艦店舗が銀座にオープンし、ブランドのエッセンスである「タイムレス・エレガンス」をコンセプトとした洗練された空間が広がります。店内ではメンズとウィメンズのシューズのほか、バッグなどのコレクションも豊富に取り揃え賑わいが絶えることはありません。
サントーニの製品作り 柔軟な物腰
新境地 他ジャンルとのコラボレーション
現在注目されるプロジェクトが2つあります。ひとつはメルセデスAMGとの、もうひとつはIWCを指します。
メルセデスAMGは、メルセデスが展開するスポーツ・レース系のブランドです。「究極のハイパフォーマンスを追求するモデル」と位置付けら、早く安全に走るための特別仕様が施されています。
このシリーズにインスパイアされて開発されたスニーカータイプのモデルが現在8種類リリースされています。AMGを操るときに履いてほしい。AMGを降りるときに履いてほしい。AMGとのライフスタイルをイメージした高級感にあふれています。
もうひとつはスイス高級時計IWCとのコラボレーション。いやオマージュといったほうが適切かも知れません。
ICW専用のストラップを提供しています。素材選びやバックルとの相性は十分に吟味されているので、時計本体の顔つきが引き締まる好評です。存在感のある製品作りで評価されるIWCですが、デザインはおとなしい印象は否めません。
ですがサントーニマジックにかかればジャケットの袖口に注目が集まります。あくまで時計本体を美しく支える、役割に徹することで本当のコラボレーションが成立すると思われます。
製法に方程式は必要ない。
アメリカ靴や英国靴の製法はグッドイヤー、かたやイタリアやフランス靴と言えばマッケイという不文律が存在します。しかしサントーニはモデルによって製法を変えています。さらにマッケイやグッドイヤーに捉われることなく独自の製法を開発しています。
それは定番モデルを持たないと言う企業姿勢が生んだ功績だと思います。サントーニは若い企業です。老舗とは違ったアプローチで市場を開拓してきました。
革新と前進を標榜する企業にとって定番モデルに固執することは許されなかったのだと思います。そして新しいモデルには相応しい製造を施す。言ってみれば当たり前の結論だったのだと思います。
サントーニは技術開発と伝統の継承にも積極的な企業です。職人の育成機関を設立するほどです。さらにメイドインイタリアを大切にしています。そうしたクラフツマンシップへのあくなき探求が、次代の方式を生み出すのです。
これまでの基軸を覆す、スニーカー
サントーニと言えばスニーカーを思い浮かべる方が多いのかも知れません。高級メゾンのエルメスへレザースニーカー作りにOEMとして参加したり、自身のブランドでもスタイリッシュなレザースニーカーをヒットさせるなどした事で大きな反響を残しました。
アディダスや、ナイキ、ニューバランスではないスニーカーの出現は新鮮な印象で受け入れられました。スニーカーの語源は英語のsneak =『しのび歩く』ですから、そういった条件さえ備えていればカテゴリーをはずすものではありません。
サントーニのスニーカーは、スポーツブランドのものと目的が違います。長時間のドライブでも疲れないものであり、立ち寄った水族館でも歩きやすいことであり、女性との楽しい時間を窮屈にさせないものでなければいけません。
適度なカジュアル感がありながら、ランチのときも相応しい顔を備えていなければいけません。そして休日仕様のパンツやジャケットスタイルにコーディネートできる『キチンと感』を求められます。
革靴同様の購入レザーが素材として使われる事が多いようですが、あえてナイロンアッパーを使ったコレクションもあるのでシーンを想像しながら選ぶ楽しさがあります。小回りの利く、こ洒落たセカンドカー。休日目的で購入したのに気づいたら毎日のように乗っていた。そんな存在かも知れませんね。
サントーニのアイテム紹介
レースアップ Santoni MCGE 11542 BA6IVVDU61
美しい。それ以外の賛辞はありません。一枚革で仕上げた贅沢なつくりです。色はブラックとなっていますが光の加減では艶っぽい陰影が浮かび上がるようです。さらに見逃せないのはソールに施されたツートンでしょう。誰にも見えない、オーナーだからこその楽しみです。
Santoni ドレスシューズ 3360410 10
ジップ仕様のミドルカットブーツです。流線型、風が切り取ったようなデザインに魅了されない人などいないのではないでしょうか。色は熟した葡萄をしみこませたブラウン。あえて素足に履く、そんな荒業が出来る男にお似合いです。
ドレスシューズ Santoni Gavin Penny Loafer
ローファもサントーニが手がけるとオペラパンプスと見まごうばかりです。カテゴリィや領域を簡単に超えてしまいます。モードからクラッシックまで工夫次第でコーディネートが楽しめそうです。
サントーニ Santoni ドレスシューズ 1424820 20
ドレス感を高める選出から、バックルを横に回り込こむようにレイアウトしています。オンタイムだけでなくオフでも。クラッシックが基軸ですがアレンジ次第ではモードでも取り入れることができます。汎用性というより、浮気性という言葉が似合います。
SANTONIビジネスシューズ Garrick Wingtip
自由度の高い、または個性が売り物になっている職種でなければこのタイプは難しいでしょう。ですがこれをサラりとこなせる人格に憧れも隠しきれません。日本とは光の量や質が違う、まさにメイドインイタリアの面目躍如。アドリア海のきらめきを見るようです。
革新と伝統、次代のサントーニとは。
創業からわずか40年余で世界を手に入れたサントーニにとって次のチャレンジは何か。
新しいプレゼンテーションを期待する半面、イタリアらしいもの作りに根ざした作品を期待する声も多いのではないでしょうか。
次世代のもの作りのテーマにAIやIoTを掲げるニュースが多くあります。機能性や利便性を求めるとき、またジェンダーフリーなもの作りには多くのヒントがあると期待されています。早く歩ける、疲れ知らず、雨や雪に強いだけでなく、情報をやり取りでき安全が担保される、そうした靴が注目されるかも知れません。
しかし機能重視では、サントーニらしさが楽しめません。
サントーニフリークにとって望ましいのは、革新を目指しながら、先人の知恵をリスペクトするもの作り。
さらにかっこ良さのためには多少の我慢も厭わない。そうした伊達男に似合うチャレンジを忘れてはいけないと思うのです。
心配はご無用。あくまでメイドインイタリアを守り抜く、広がりだけでなく深度を大切にするサントーニは、軽やかに時代をエスコートしてくれると信じています。
この記事をシェアする
関連記事
足元もお洒落に決めたい方にお勧めの革靴、ビジネスシューズの人気ブランドをご紹介
- 4,252View
足元は永遠の17歳。オフタイムは「HARUTAの革靴」で軽やかに。
- 10,550View
- 42,432View
著名人に支持される「JMウェストン」の革靴。漆黒(ノワール)が放つ魅力。
- 18,053View